やりたいことは全部やれ 大前研一 講談社
原子物理学者から、マッキンゼーに転じコンサルタントとしての頂点を極めたかと思ったら、今度は政治に進出、斬新な改革案で人気を博した大前研一と言う人は、まあ、何しろ天才と言ってよいのだろう。やることなすこと自信に満ちて、都知事選に惨敗するという挫折や、オートバイ事故で死線をさ迷うという挫折も味わったが、この人はめげることはないし、前向きに生きているのだが、やはり並の人物ではない。
そんな超人的な人の人生観を聞いたところで、凡人にとっては大して参考にもならないかとも思ったが、まあ、確かに言っていることは間違っているとも言えないし、それなりのめげない前向きの人生観、人生論には勇気付けられもするし、満更参考にならない訳でもない。
何しろ大前研一の精神的なバイタリティーは一体どこから生まれて来るのかを、本書を読んで知るだけでも無駄にはならない。
そのバイタリティーの源泉は、まさに本書の表題にあるとおり、「やりたいことは全部やる」という人生観、良く遊び、やろうと思ったことは、いつまでも躊躇せず、直ぐにやるとということにあるようだ。
引退したら釣り三昧の生活を送ろうなどと思っていては、引退した頃には、釣りも出来ないほどに体力が衰えているかもしれないから、今、出来る内に釣り三昧の生活をしてみれば良いという人生観はユニークだ。
そうやって、釣り三昧の生活を実際にやってみると、別にほめてくれる人もいないし、漁師と同じことになってしまい、如何につまらないものかが直ぐに分かるという話も何となくうなずける。
確かに「やりたいこと」あったら、待たずにやってみるというのは、すべからく人生においては大切なことかもしれない。
（01年12月発行）