宇宙を支配する６つの数 マーティン･リース 草思社
150億年の歴史をもつこの複雑極まりなくしかも広大な宇宙の構造や、微細な量子論の世界の成り立ちは決して気まぐれな偶然によって存在するのではなく、物理学の方程式によって支配されていることが、次々に解明されてきている。
著者はこの宇宙が今のような形であるためには、基本となる6つの数字が絶妙な配置にあることによるという。その６つとは、空間の次元数、原子核の結合の強さを表す数、宇宙の物質量、電気力と重力の強さの比、宇宙定数、宇宙での物質の濃淡を表す数、であるという。
この6つの数が、現在観測されている数よりも少しでもずれているだけで、現在の宇宙は存在し得ないであろうし、即ち、我々は存在しえないであろうという。
これらの6つの何とも微妙な天の配剤ともいうべき数字を中心に、壮大な宇宙論から哲学へという興味ある解説が続く。
この宇宙が今の形で存在しえないとしたら、今の宇宙を認識している我々も存在せず、即ち認識自体が存在しないことになる。
即ち、この宇宙があるのは、あたかも我々を存在させるためであるかのようにさえ思えてくる。
時間という次元の異質性、宇宙の構造、ひも理論など宇宙物理学の最先端の理論を、
分かり易くしかも哲学的なエッセー風に描いた好著である。
(01年11月発行)