ギャンブルに人生を賭けた男たち マイケル･コニック 文芸春秋
ギャンブルは、勝ったり負けたりするのが当たり前だと思っている人は、ギャンブルで勝つことはありえない。ところが世界にはギャンブルで暮らしている、あるいはギャンブルによって富を築いた人が少なからずいるが、彼らは、ギャンブルを勝ったり負けたりするものとは考えていない。
カジノ産業のようにギャンブルの胴元の立場で稼ぐのではなく、自らがギャンブラーとなり、この「勝ったり負けたり」の世界で勝ちつづける男たちとは一体どんな人種なのかのルポが本書である。
本書に描かれている「ギャンブルに人生を賭けた男たち」には共通点がある。いわゆるプロのギャンブラー達は、強烈な意思と自負心の持主だということだ。
本書ではあらゆる種類のギャンブラーが取り上げられている。冒頭のエピソードは豊胸術によって豊かな胸を持って一年過ごしたら10万ドルという賭けに挑戦して、実際に勝った男の話だ。「賭けに勝つ」とはまさにこの男のように、何物にもとらわれない、一風変わったともいえる「勝つためには何でもする」強烈な意思であることが、先ず冒頭で強烈に印象付けられる。
さらには、カジノにおけるいかさま師とカジノ側の攻防、競馬のブックメーカーの裏側、スーパーボールを取り巻く賭けの仕組みといったエピソードが続くが、どれをとっても、｢賭けは勝つためにある｣という信念を持った男たちのエピソードである｡
最後の数章は、ポーカーの世界最高レベルのプレーヤー達の話だ。一回の勝負に米国人の平均年収以上の金額を賭けてしまう者たちの集まるゲームの記述は、臨場感があってあたかも自分がゲームをしているような気分を味わえる。
ポーカーは賭け事だと考えているようでは、ポーカーには勝てそうもない。世界最高のポーカープレーヤーは、勝つべくして勝っているようなのだ。
ギャンブルの魅力とは実に不可思議なものだということを、あらためて思った。
（02年1月発行）