首相官邸　　　　江田憲司・竜崎孝　　　　　　　文春新書　　　

米国に次ぐ世界第二位の経済力を誇り、押しも押されもしない大国である日本の国家権力の中枢である内閣総理大臣が、日常の執務をこなし、又、生活の場としている首相官邸・公邸は米国のホワイトハウスに比較してその機能といい、設備といい大分見劣りがするようだ。

とはいうものの、正直、その首相官邸とはそもそもどんなところであるのか、そこにはどういった人達が働き、何をしているのか、どんな点がホワイトハウスに較べて見劣りしているのか、という情報は、余り知られるところではない。

本書は、長く官邸詰として活躍した記者と、政務担当秘書官として首相を支えてきた元通産官僚という、いわば官邸の住人二人の共著によって、その知られざる首相官邸を紹介したものだ。

まず、官邸内のそれぞれの部屋の配置、そしてそれらの部屋がどのように使われているのかといった詳しい官邸の内部の解説があるが、それを通じて正に首相官邸で行われる日本の政治の息吹を感じることができる。

又、官邸の主人たる首相の一日、そして一年を通じての歳時記的な行事の解説からも、政治の現場のダイナミズムを知ることができる。

官邸内の食堂のメニューはどうなっているか、各大物政治家お気に入りの床屋はどこかといったエピソードも面白い。

つい最近まで、現実に首相秘書官として活躍していた著者だけに、余り生々しい政治批判は押さえられているものの、内閣の危機管理体制や、副大臣制の問題点について、かなり突っ込んだ批評がなされていることにも好感が持てる。

（02年1月発行）