仕事は楽しいかね？　　　　デイル・ドーテン　　　きこ書房　　　

ＭＢＡがもてはやされ、高度な経営理論に基づく経営手法で動いているはずの米国のビジネス界だが、一方では半分宗教がかったのではないかとさえおもえる、自己啓発書が溢れる世界でもある。

ビジネスに限らず現代の複雑な社会では「成功」することは、理論だけでは難しく、従って、自己啓発といった多分に情緒的なものへすがろうとするのは当然の成り行きだろうか。

日本人の経営者が孟子や孔子の言葉にすがろうとするのと似ているのかも。

本書は、将来への希望を失っている中年の主人公が、ひょんなことから出あった老人のアドバイスによって、自己変革していくという物語形式をとったビジネス啓発書だ。

ビジネスにおける成功の秘訣が様々な逆説を真とすることにあることが述べられる。

一例は「目標を立てるな」ということだ。目標を立ててそこへ向かうことにのみ集中していたのでは、実は目の前を通り過ぎていく多くの成功のチャンスをみすみす逃すことになるという。具体例として、コカコーラがいかにして生まれたが、リーバイシュトラウスのジーンズがどうやって誕生したかが語られる。

極めて短い物語であり、警句、格言の類に、なるほどと思わせるものも多い。アメリカビジネスマンは、こんな本を読んで自己啓発しているのかという雰囲気を知るという意味では面白いかも。

（01年12月発行）　