肩ごしの恋人　　　　　　唯川恵　　　　マガジンハウス　　　　　

最近の芥川賞作品には失望させられることが多いが、山本一力の「あかね空」、およびこの作品のように直木賞作品は、納得のいく面白い作品が多いように思う。

この小説の主人公は萌とるり子という20歳台後半の女性二人。二人は5歳の時からの幼なじみだが、性格や人生観は正反対。

異性には好かれ同性には嫌われるタイプのるり子、男に対して常に冷めてしまい一歩踏み切れない萌。

男にとって魅力のある女であること、自分の欲望に対して素直であることを信条とするるり子、自立した女であろうとする萌。

男から見て不可解な女性という生き物が、何だかこの二人によって全て代表されているようにさえ思える。

るり子の3度目の結婚式から始まるこの物語は、その3度の離婚を通じて、萌とるり子という二人の女性が、それぞれの幸せの道を見つける再出発までの奇妙なストーリである。

るり子に取り入ろうとする男たちが、るり子が手玉にとったつもりでいると意外なかたちでるり子を裏切ったり、15歳の崇という高校生の男の子との奇妙な3人同居があったりと、物語の展開も中々面白いし、20台後半の女性達の物の考え方を謎解きの様に分かった気分になれる。

人間同士の愛が、年の差とか、性の差とは無関係になりたちうることを、ゲイの世界の男たちを登場させることで物語るなど小説の舞台も広いし、それなりの深みもある。

会話体を主体とした文体は軽快だし、若い女流作家としては中々の書き手だ。

（01年9月発行）