無限に魅入られた天才数学者たち　　アミール・アクゼル　早川書房　　　

無限については、古くギリシャ時代から様々な数学者、哲学者、宗教家、論理学者が挑戦してきたが、未だに数学上最大の謎のままとなっている。

とはいいうものの、この二千年来のこの謎の解明には、19世紀末以降、大きな進展がみられた。特に、二人の天才数学者、ゲオルク・カントールとクルト・ゲーデルの業績は目覚ましいものがある。

この二人の業績のエッセンスは無限の概念を集合論で証明しようとしたところにある。カントールは自らが作り出した集合論によって「無限」は「無」から出発した無限の集合が無限に階層を重ねたものだが、最終的には「到達しえない」「存在しえない」ものであるという。

無からはじまり無にもどると、すなわち「色即是空空即是色」ということだろうか。

ゲーデルとカントールはともに「無限」の謎に挑戦することで、その晩年には精神に異常をきたすことになった。「無限」の魔力ということだろうか。

本書は、カントール、ゲーデル等の業績を一般にも分かりやすい形で解説するにとどまらず、カントール、ゲーデルなどが、何故「無限」にとりつかれていったのかといった背景、その生い立ちに詳しくふれており、一つの物語としても実に面白い。

いやはや、数学とはかくも面白いものかとあらためて感心させられる。

（02年2月発行）