星はなぜ輝くのか 尾崎洋二 朝日選書
「我々から一番遠い宇宙の果ては150億光年先に広がる」「この宇宙は超高温、超高密度の一点からビッグバンを経て作られた」等々の宇宙物理学、天文学の語る言葉には、科学というよりも寧ろロマンを感じる。まして、本書がいうように「私たちは星くずから生まれた」となると、実にぐっとくるものがある。
そういった意味で天文学ファンは多いのだが、本書はそのような宇宙の謎にロマンを求める人たちにはお薦めの一冊だ。
著者は激変星といわれる、輝きが急激に変わる星の権威とのことだが、本書は、自らの研究成果をまじえ、星というものの成り立ち、そしてその一生がどのような過程を辿るかを分かり易く解説し、又、我々生命を形作る物質が、星の生成過程とどのように密接に繋がっているかを語るものだ。
太陽のような恒星がどのように形作られ、そしてそのエネルギーの補給源である核融合反応がいかにしてはじまるのか。更に、その核融合反応がなぜ長期に亘って安定的に行われるのか。あるいは、核融合の燃料である水素を使い切った星はどうなるのか。表題にある「星はなぜ輝くのか」という疑問に対して、様々な角度から語られる。
我々の体を形作る物質が、全てこれらの星が輝いた後に残された、いわば星くずでできているとの話には、感動さえ覚える。
著者が天文学者を志した一つの理由でもあった、星座をめぐる神話などの紹介もあり、大いに楽しめる一冊だ。
（02年2月発行）