現代思想の遭難者たち いしいひさいち 講談社
ハイデガー、マルクスからポパーや、ルカーチまでの現代思想家34人の業績を４こま漫画で解説してしまおうという、逆転の発想的な企画である。
知性の最先端であるともいわれる、哲学とマンガという取り合わせとは、ミスマッチにも思えたが、著者が相当な読み込みを行った結果であろうか、意外と各思想家のエッセンスが描かれている。
本書全体から浮かび上がるのは、20世紀思想家のメインのテーマは、「存在」という一点にあるということだ。
「存在」が先か、「意識」が先か、の堂々巡りは、ギリシャ哲学から連綿として続いている哲学の根本問題ではあるが、20世紀に入ってその思考が更に研ぎ澄まされたというよりは、「土壷にはまってきた」といった方が良いのかもしれない。
まあ、素人からみれば、分からないことを考えに考えているうちに、もう、だれも分からない哲学思考の深い井戸の中に落ちてしまったのが現代思想ということかもしれない。
これらの難解な思想家達の業績を、わかり易いマンガという手法で解説されても、瞬間分かったような気分にさせられても、直ぐに、さっぱり理解できていないことに愕然としてしまい、こんな訳の分からないことで口角泡を飛ばしている哲学者という人たちは、まともではないのではと考えてしまうのは、凡人のひがみなのだとは思うが。
（02年6月発行）