親日派のための弁明 金 完燮 草思社
ワールドカップの日韓共催によって日韓の相互信頼が増したといった楽観的な論調がみられるが、お人好しにそんなことを言っているのは日本側だけで、韓国側での反日感情にはいささかも変化がないともいわれる。
どう考えても難くせとしかいいようがない「日本海」の呼称を「東海」へ変更せよとか、教科書問題、靖国問題への内政干渉をみていると、隣国の人たちの思考回路が全く理解できずに戸惑いを覚えてしまう。
著者、金 完燮氏は、この原因は韓国で既に50年以上に亘っておこなわれてきた、日韓関係史の歪曲と、その歪曲に基づく反日教育の結果だという。
本書は韓国でおこなわれる歴史教育に対して真っ向挑戦するものであるが、その内容が、政府のお眼鏡にかなわなかったらしく「青少年有害図書」に指定され事実上の発禁処分を受けているのだとか。この現代において、言論統制まがいの発禁などということが韓国では行なわれていることも驚きだが、この程度の内容にも国家的検閲をおこなっているということは、とりもなおさず国家事業としての反日歴史歪曲を行っているということを証明したことにもなるわけで、あらためて暗然とした気持ちになる。
韓国側が日本に持つ反感の根本にあるのは韓国併合の35年間の評価である。李朝の支配の下に幸せに暮らしていた朝鮮に、日本が非道に乗り込み悪逆の限りを尽くした。朝鮮人はその日本に対して頑強に抵抗しつづけてきた。現在の韓国の繁栄は、すべて韓国人の努力の成果であり、不幸の元凶は全て日本にある。というのが、韓国でおこなわれている歴史教育、反日教育だ。
この部分について、著者は、李朝の腐敗しきった政権が、清国と通じて朝鮮人民を苦しめていた時代に、これを救ったのが日韓併合であり、日本は韓国を植民地としてではなく、日本の一部としてさまざまな「よい事」をした。朝鮮人は第二次大戦時には「日本人」として進んで戦争に参加したにもかかわらず、終戦後、一転して被害者だといいはじめた。さらには非道にも日本が朝鮮に残した資産を全て接収してしまった。韓国は日本を非難するべきではないし、寧ろ感謝すべきだ、当然、日本はこれ以上韓国に謝罪や賠償を行なう必要はない、というものだ。
日韓併合以前の朝鮮の歴史についても広く言及し、国家言論統制下における、極端な朝鮮美化歴史観に疑問を投げかける。更には、戦後の韓国政治において「反日」がいかに韓国内政に利用されてきたかを指摘している。
「竹島」は日本固有の領土であり、日本海を東海と呼び変えよなどという主張は、全くナンセンスである、等と、これが韓国側の意見とはと驚かされる。
歴史評価は常にその評価する側の主観によって異なるのは致し方ないが、韓国のこの歪曲された歴史観は世界でも物笑いのタネだという指摘を、一般の韓国国民に冷静に聞いて欲しいとは思うが、何しろ、発禁されている著作ではあるし、韓国の人たちが聞く耳を持つとは思えないのは残念なことだ。
韓国にも著者の主張と同様に考える人も多いとは思うが、それを声に出せない雰囲気が強いことは容易に推測される。
タイトルに使われている「親日派」という言葉は、韓国では「売国奴」に等しい意味合いを持っているのだとか。その親日派を敢えて名乗る著者の勇気に脱帽してしまう。
（02年7月発行）