トヨタはいかにして「最強の社員」をつくったか 片山修 祥伝社
終身雇用、年功序列型賃金を柱とする日本的経営下での人事制度は、日本経済の成長期における大きな原動力であった。
安定した雇用の中で、従業員は企業に対するロイヤリティを保ち、また、それゆえにこそ、組織的協調の中でのたゆまぬ業務改善努力が行なわれてきた。
しかしながら、まさにその日本経済の絶頂期にこの日本的人事制度の破綻のかげは忍び寄っていたのだ。
国際競争力の激化による、コストの削減圧力は、まず年功序列型のピラミッド型組織の維持が将来的に破綻するであろうことを示していた。
重層型組織においては稟議システムに代表されるように意思決定に時間がかかり、また、ビラミッド型組織形態はポストの不足という深刻な事態を招くであろうなど、変革を迫られる要素は多かったのだ。
それでは、日本型組織形態の維持が不可能となった場合、日本型人事組織のもっていた利点を残し、また、国際競争力を備えた組織に備えるかには、組織をどのように変革していくべきかの課題は、経済成長期の躍進の中で既に提示されていたのだ。
このような問題点に逸早く気付き、組織形態の変革を図って来たのがトヨタであると本書は言う。トヨタは構造改革に他企業より10年早く着手し、「亀の歩み」の積み重ねによって遂には、トヨタ式と言われる斬新な人事・組織制度を作った。現在、多くの競争相手が苦境にあえぐ中で、トヨタは常に最高の利益を上げつづけている。
本書ではそのトヨタ式人事の詳細が述べられているが、「組織のフラット化」によりおきるポジション不足をいかに補いつつ、しかも従業員のモチベーションの維持を図ったのか、あるいは従業員の自己変革をいかに促し、企業のたゆまぬ改善努力へと繋げていったかなど興味深いトヨタ式人事の詳細に述べられている。
トヨタ式といいつつも、そこに欧米型の人事管理とは全く異なった新日本式人事制度の萌芽があるようにも思える。
（02年4月発行）