チョコレート工場の秘密 ロアルド・ダール 評論社
チャーリーの家はとても貧しい。歯みがき工場で働くお父さんの収入はわずかで、4人の祖父母と両親とチャーリーの一家6人が毎日どうにかキャベツのスープで飢えをしのいでいるありさまだ。
そのチャーリーが世界一美味しいお菓子を作るウィリー・ワンカ氏の謎の工場を訪れる幸運に恵まれる。ワンカ氏の工場はなぜ謎の工場かというと、その工場の中を見た人はこの十年いないというのに、工場で作られるお菓子は、世界一不思議で、世界一美味しいからなのだ。
たった、5人の子供がワンカ氏の工場見学のチャンスを得た。その5人とは、チャーリーの他に、とても食いしん坊のオーガスタ･グループ、テレビばかり見ているマイク・テービー、お金持ちのわがままお嬢さんのベルーカ・ソルト、一日中お行儀悪くガムを噛んでいるバイオレット・ボールガードという顔ぶれだ。
さあ、いよいよワンカ氏のチョコレート工場の扉が開かれた。5人がその工場の中で見たとっても不思議なものとは何だったのか。はらはらどきどきの物語が展開する。見学がすすむにつれて5人の子供たちは一人又一人と消えていってしまう。さてチャーリーの運命やいかにーーー。
ロアルト・ダールは女優パトリシア･ニールの夫だが、二人の間には4人の子供がいた。ダールはその子供たちに毎夜ベッドサイドでお話を聞かせていたが、この「チョコレート工場の秘密」もそのベッドサイドストーリーを、1964年に童話として出版したものだ。
数多いダールの幻想的な童話の中でも傑作といわれるものだ。もちろん子供でなくてもたちまちにして不思議な物語の世界に引き込まれること請け合いだ。
（88年7月発行）