だからアメリカは嫌われる マーク・ハーツガード 草思社
唯我独尊の正義を振りかざし、世界が何と言おうがイラク攻撃に踏み切ったアメリカの思考を理解することは難しいかもしれない。独裁者サダム・フセインを懲らしめるというアメリカの大義名分も、その一方ではウズベキスタンのカリモフ大統領という最悪の民衆弾圧者への肩入れというダブルスタンダードから、どうも胡散臭いと思われがちだ。
アメリカのダブルスタンダードは何も今回に限ったことではなく、ある意味ではそんな例は溢れているといえるのだが、問題なのはアメリカ自身、そういった矛盾した行動にさしたる疑問を抱いていないし、世界がどう思おうが気にしてはいないというところだろうか。
世界のどんな辺境に住む人々でも、常にアメリカを意識している。それは、アメリカこそが羨望の国であり、だからこそ、嫉妬の対象にもなるからだ。しかし、それと全く対照的にアメリカ人は驚くほど海外に対する関心も知識も持ち合わせていない。これが、世界におけるアメリカの政府、企業などの唯我独尊、傍若無人な行動の原因であり、アメリカが嫌われる原因となっていると著者はいう。
イラク攻撃以前に書かれた本書は、9.11のテロ攻撃によって受けたアメリカ人の衝撃、すなわち「我々は何も悪くないのに、なぜ嫌われるのか」という疑問を、自省的に検証したものだ。
ステレオタイプに「アメリカとは」「アメリカ人」とはと断定するのではなく、アメリカのどういう部分が、そしてアメリカのどういうところが嫌われているのかという冷静な分析は中々面白い。ただし、かなり主観的な部分も多く、一般論として受け取れない面が多いと感じる読者は多いかもしれない。
アメリカにもこういう怒れる市民がおり、自省をこめてこういうぼやきをつぶやいている人もいるということを知るだけでも、まあ、面白いかもしれない。
（02年10月発行）