シンプル人生の経済設計 森永卓郎 中央公論新社
テレビのコメンテーターとしても活躍中の著者の肩書きとしては経済評論家ということになるのだろうが、多彩な趣味人としても知られているとのこと。本書の表題も「経済設計」とはなっているものの特段、経済設計の具体論に触れているわけではなく、著者の人生論を語ったものと理解した方が良いだろう。
仕事は順調で超多忙（睡眠は4時間以下だとか）、収入も良いだろうし、趣味に生きて人生を楽しんでいるとなれば、まさに著者自身はこの厳しい競争社会の中の「勝ち組」の一人といえるだろうから、彼が語る人生論は傾聴に値するということなのだろう。
本書の要旨としては次ぎのようなものだろうか。これからの競争社会では「勝ち組」と「負け組」の峻別がますます激しくなるが、「勝ち組」に残るのは1%にも満たない人たちであり、99.9%は「負け組」になる。すなわち「負け組」が当たり前なのだという前提にたって、これからの人生設計を考えるべきだ。
すなわち、収入が落ちても自分の好きなことをして生きていける人生をえらぶべきであり、そういうシンプルな人生を送るために障害となる人生の三つの不良債権「専業主婦」、「子供」、「住宅ローン」（こういう言い方も結構どぎついけれど）の処理はこのようにやるべきだ。と、著者のいうところの「経済設計」が語られる。
まあ、間違ったことを言っている訳ではないとは思うけれど、あざとい人生論を聞いているようで、すっきりしない。「勝ち組」に対するやっかみかもしれないけれど。
（02年11月発行）