競馬どんぶり 浅田次郎 幻冬社
競馬の楽しみ方には色々あるが、いずれにしても競馬がギャンブルであるという面を無視したのでは競馬の真の楽しみは理解できないだろう。
私の競馬歴は既に35年になる。しかし、この年まで競馬ファンを続けてこられたのは、ギャンブルとしての競馬と上手く付き合い、競馬の楽しさをフルに味わってきたからだと思っていた。
浅田次郎も競馬歴は30年というが、本書を読む限りスタートは私の競馬歴と１年しか違わない。彼も競馬を趣味として大変なのめり込み方をしながらここまで続けて来たのには、彼なりの競馬ギャンブル理論をしっかりと構築し、ギャンブルとしての競馬と上手く付き合ってきたためのようだ。
本書は若者向け月刊誌「おもしろ競馬塾」に浅田次郎が競馬論を連載したものとのことだが、実際には月に一回、競馬終了後にインタビュー形式で語った「語りおろし」であるという。
最終レースが終わった後の飲み屋で、競馬談義に花を咲かせるオヤジの一人としての浅田次郎の競馬論、人生論というところだが、これから競馬を一生の楽しみとしてやっていこうとする若者に、そして、すでに競馬を楽しんでいる多くの中高年にとって、中々参考になるのではないだろうか。
曰く、競馬に勝つためには土日は競馬場に行き、朝の1レースから最終レースまでしっかりと見なければダメだとか、全レースのデーターの予習復習を徹底的にやるべきだという猛烈な部分は、確かにご説ごもっともながら、実行はできないよという人がほとんどだろう。
しかし競馬に勝つためというよりは、負けない為には「パドックを見ること」「馬券を当てるのではなく、勝つ馬を当てるという気構えが大切」などという部分は、競馬歴35年のタカさんの理論と全く同じだなどと思い、あれやこれやで、最後まで楽しんで読んだ。やはり、オヤジの競馬論議というものは捨てがたいものがある。
（00年12月発行）