滑稽 大室幹雄 岩波現代文庫
古代中国では諸侯が諸子百家といわれる人々をそれこそ「三顧の礼」をもって迎えた。良きアドバイザーを得た王は、国を良く治めることも出来たし、隣国との勢力争いにも勝ち残ることが出来たから、遊説家たちの口舌は王にとっては極めて重要なものであった。その代表者が孔子や孟子であり、彼らの教えは現代にも深い影響を及ぼしている。
本書を読んであらためて思わされたのは、これら諸子百家は現代でいうところの正にコンサルタントと同じではないかということだ。コンサルタントである以上、彼らも又、雇い主に採用してもらうには売り込みの駆引きなども当然あっただろうが、その辺りの事情は本書には詳しく述べられている。
更には、孔子や孟子のような、コンサルタント、遊説家を用いて、古代の王たちが具体的にどのように政治を執り行い、あるいは執り行おうとしたかが豊富な資料によって述べられているが、古代中国社会の仕組みが浮かび上がってくる。
彼等遊説家は雇い主を求めて国から国を旅していた。真理を説くというよりは、豊富な知識をもとに相手を言い負かせてしまう口舌の徒であったと本書は言う。彼等のこの弁舌のことを古代中国では「滑稽」と言ったのだとか。
新しい視点から古代中国の社会、政治史に光を当て、その豊富な資料に基づく古代中国論はユニークだ。
(01年12月発行)