中国台頭 津上俊哉 日本経済新聞社
地球の総人口60億人の1/4弱14億の人口を擁する中国が、世界の政治や経済に及ぼす影響は、その圧倒的な数字だけからしても無視できないことは明らかだ。
しかも、近年すすむ改革解放による目覚しい発展は、時には中国脅威論ともなるし、又、「社会主義市場経済」という矛盾しきった制度と、発展にともなう不正と腐敗の横行に着目すれば「中国怖るに足らず」論も成り立ちうる。
そう、この巨大な中国を一元的に解釈しようとすること自身が不可能だというべきなのだろう。
通産省のエリート官僚であり、外務省に出向し現地赴任を含め長く中国問題に関わってきた著者の見る中国の分析は、このような多様的な中国を、総合的に俯瞰していて鋭いものがある。
特に、日本側にとっての対中国政策がどのような総合的見地にたつべきかといった提言には、中央官庁で政策立案などに携ってきたエリート官僚の見識と気概が感じられて面白い読物になっている。
タイトルには中国問題が掲げられているが、その中身には多分に日本国内の構造改革問題なども取り上げられており、著者の政治エッセー集の趣きもある。
もっとも、随所に「確かに中国にもこういう悪いところはあるが」といいつつも「しかし、この点は日本は理解しなければならない」あるいは「日本もこういう点はあるではないか」と言った調子で、著者の「中国びいき」の結論に導かれる竜頭蛇尾なものがみうけられるのは、いささか公正さを欠く感じがしないではない。
（03年1月発行）