犬の人生 マーク・ストランド 中央公論新社
マーク・ストランドは1934年生まれの現代アメリカを代表する詩人である。本書はその詩人の手になる、短いものは見開き2ページ、長いものでも20ページあまりの14の短編からなっている。
これは短編小説というべきか、はたまた、散文、詩というべきか迷うところではあるが、確かに現代詩のもつ、シュールリアリズムに溢れた不思議な短編集である。
しかし、それぞれの短編が醸し出す雰囲気は、正に現代アメリカそのものであって、ボブ・グリーンなどと共通項をかなり持っていることを感じる。これが、いわゆる、アメリカン・オフビートというらしい。
表題作になっている「犬の人生」は、妻に自分の過去を打ち明ける男の話しだ。「ねえ、前から君に言わなくちゃと思っていたことがあるんだよ」「実を言うとね、僕は以前は犬だったんだよ」といった会話の中にこめられた、シュールさは、かなり心地よく響くのはどういう訳なのだろうか。
読み方によっては難解とうつるかもしれないが、ストランドの作品は理解しようとするのではなく、そのまま、コピーをとるように読み取ればよいのではないかと思った。
（98年10月発行）