パプリカ 筒井康隆 新潮文庫
SFというジャンルでは作家はフィクション創造の自由度をかなり広く持つことができる。それだけに、その作家の構想力やら物語性の力量が一目瞭然となるのではないだろうか。
SFの第一人者としての筒井康隆の力量は、この「パプリカ」において、遺憾なく発揮されているといってよいだろう。
夢の世界と現実の世界とを行き来することが出来たら、又、自分の夢と他人の夢とが交信しあい、他人の夢に現実世界の人間が入り込むことができたら、――というまさにSFならではの前提でこの物語は進む。
そして、何時か、この現実の世界と、夢の世界とが渾然一体化してしまうなかで進む展開に、読者は幻惑され、困惑しつつも、この物語が一体どのように進むのかという好奇心に、ページをくくるスピードはどんどんと増してしまう。正に、筒井マジックと言ってもよいのではないだろうか。
エンターテイメント性にも優れている奇想天外な物語は、一読の価値ありだ。
（02年11月発行）