ブラックジャックによろしく（1−6巻） 佐藤秀峰 講談社
医療問題をテーマとした社会派コミックとして話題の本書は現在も連載中であって、さあ、この先何巻までいくのかわからないが、とりあえず単行本化された６巻までを一気に読んでみた。読後感の第一は、「第7巻が待ち遠しい」というものだった。
主人公の研修医・斉藤栄二郎は、超一流の永禄大学医学部を卒業、同大学の付属病院の研修医となる。そして彼は、救急医療の現場で、そして医局というなの権力機構の中で、日本の医療がどれほどの矛盾を抱えているかを目の当たりにしていく。
患者と医者の関係は常に三人称であるべきだと言われ、斉藤は人間としての患者に接することのできない「医者」とは、一体何なのかと悩む。
冒頭の1−2巻は研修医制度を通じて、日本の医療制度の矛盾を突き、3−4巻では、未熟児や障害児問題を通して、人間の生命の尊厳について、そして、5−6巻では、がん治療の現状、告知は何のためにおこなわれるのか、そして化学療法は是か非かといった重いテーマが続く。
読者は、「医者とは何か？」について思い悩み、現場で激しく葛藤する研修医・斉藤栄二郎になって、まさに治療現場で放浪することになるだろう。
コミックと言って侮れない内容を持っている。
（03年7月発行）