マンガ金正日入門 李友情 飛鳥新社
今から十年も前ならば、金正日に関するデーターは極めて乏しかった。しかし、今や、その性格や嗜好、そして女性関係までが知られることとなっている。
しかし、こういった情報は、金正日をカリスマ的存在、いや、神のような存在だとしておきたい北朝鮮の当局や、その金正日に媚びへつらうことで、ノーベル平和賞を獲得した大統領や、その後継者を持つ韓国にとってはまことに都合の悪いことのようだ。
そんな事情もあって、5年前に本書が韓国で刊行されるや、韓国政府の圧力によってたちまちにして出版停止に追い込まれたという。
日本語訳を出版しようにも原版さえ失われているという状況であったため、今回、本書を発行するに当たって、作者の李友情は、初版を参考にして全て絵を描きなおし、日本人拉致問題などを書き加えたのだとか。
マンガという読みやすい手法を使っているものの、本書に描かれた金正日は、巷間知られているあの独裁者の真実の姿に迫るものである。
何故、この程度の真実さえもが韓国では発禁処分になるのか理解に苦しむところだ。
金正日はロシアで生まれ幼年期は「ユーラ」というロシア名前を名乗り悦に入っていた。白頭山にある金正日の生誕の家などというものは、全くの作り事でしかない。
父、金日成から後継者として認められるまでには、身内やパルチザン出身の長老たちとの長い権力闘争があった。しかも、金日成の死後、権力掌握までにはやはり苦難の十年があったことなど、本書の内容は実に濃いい。
世界のならず者国家が何故、今もあのような形で存在しうるのか、そして、累々たる北朝鮮人民の屍の上で、金正日という独裁者が、何故今もなお権力の座にありつづけられるのか。そういった、疑問の一部が本書によって解けること請け合いだ。
あらためて、本書を韓国で再発行し、多くの韓国人に金正日の真の姿を知ってもらいたいとも思う。
（03年8月発行）