弱みを見せられない社長のための本 和田秀樹 扶桑社
社長の年代といわれる40代、50代の男性にうつ病が多いのだとか。うつ病患者は自らの病を認めたがらない傾向が強いというが、次のような4大症状があれば、うつ病を疑ってみるべきだという。
1.抑うつ気分： 気分が沈みがち、涙ぐんだり、後悔や絶望感におそわれがち
2.精神運動制止症状： 頭を使おうとしても集中できない
3.不安焦燥感： 常にイライラして、落ち着きがない。怒りっぽくなる。
4.自律神経症状： 食欲や性欲が減少。早朝に目が覚めることがある。
まず、この辺りの記述を読んでドキリとする中年男性は多いのではないだろうか。
更には、ちょっと胃が痛いと「胃がんじゃないか」と考えたり、何事でも最悪のシナリオを想定してしまうのが、うつ病に多い「自動思考」症状だという。若い時から動悸が激しくなれば「心臓病ではないか」、頭痛がすれば「脳梗塞」ではないか、といった調子の心配性の性格なもので、この記述を読んで、自分もうつ病なのだろうかと、ちょっと顔が青くなってしまった。
この例のように、本書は一応「社長のための本」とはなっているものの、現代社会のストレスにさらされている中年男性すべてにとって中々参考になるのではないだろうか。（ということは、現代に生きる多くの中年男性は、うつ病傾向にあるということかもしれない）
うつ病に対する日米の治療体制の違い、あるいは躁うつ病の多い中年世代と、分裂病気質の多い若い世代との断絶、といった問題を精神医学の面から分析している章など、実に面白い。
(03年6月発行)