スタンド・バイ・ミー スティーヴン・キング 新潮社
スティーヴン・キングの中篇4作による「恐怖の四季」シリーズは、「刑務所のリタ・ヘイワース」と「ゴールデンボーイ」の二編が春夏編として「ゴールデンボーイ」に収められており、他の二編「スタンド・バイ・ミー」と「マンハッタンの綺譚クラブ」の二編が秋冬編として本書に収められている。
キングを「ホラー作家」と呼ぶとしたら、この4編ともちょっと彼の得意とする「ホラー」ではないかもしれない。敢えていえば本書の「マンハッタンの綺譚クラブ」がホラーと言えなくもないが、子供を産むという女性ならではの崇高な使命を果たすための悲劇をテーマにしたこの物語を、単純にホラーと言ってしまうのは憚られるようにも思う。
「スタンド・バイ・ミー」はキング自身の少年期の思い出の記ともいうべきものだ。
確かに、ストーリーとしては、13歳の少年たち四人が、行方不明となり轢死した同年代の男の子の死体を捜しに行く途中で起きる様々な「冒険」を描いたという意味では、「ホラー」という分類も可能なのだが、「トム・ソーヤの冒険」や、グリーンの「オール サマー ロング」などに通じる古き良きアメリカの雰囲気にあふれる叙情的な描写にこそ評価を与えるべきではないだろうか。
日本には、それほど多くはないストーリーテラーがアメリカにはキングを始め多くいるのだが、この日米の差はどういうところから出てきているのだろうか。
（87年3月発行）