新選組証言録 山村竜也 PHP新書
平隊士まで含めれば新選組隊士の中で明治以降も生き残った者の数は少なくはない。本書はそれらの生き残りの新選組隊士のみならず、新選組を名乗る前の新徴組時代の隊士あるいは、新選組とかかわりの深い人たちの回顧談を、明治の後期になってから聞書きしたものだ。
生き残りという意味から言えば、途中から新選組と路線を違えた人々が多いのは当然であり、その意味では新選組に対する批判的な証言がどちらかと言えば多く、「近藤、土方は悪人」という証言、あるいは変名の上に流山に隠れ住んでいた近藤勇が、いよいよ捕縛されるに当たって顔面に恐怖の色があふれていた、といった話しなど、事件後40年ほど経っているにもかかわらず、反対派の新選組に対する怨念が相当に深い点などが実に面白い。
「油小路の決闘」事件の当事者が語る当時の模様などは、まさに迫真のものであって、今、ブームともいわれる新選組だが、そのドラマよりもはるかに迫力がある。
又、これらの証言が語られた明治後期の人々の話し言葉が、そのまま忠実に採録されており、今から100年近く前の日本人の話し言葉が現代のものといかに異なっているかを知るという、本書の内容とは違った面でも、なんとも興味の尽きない。
（04年7月発行）