北朝鮮 絶望収容所 安明哲 KKベストセラーズ
「おぞましい」という言葉は、正に本書に描かれた北朝鮮の強制収容所で信仰していることを言うのだろう。
著者は北朝鮮の政治犯強制収容所、中でも一度入ったら二度と出られないといわれる「完全統制区域」において警備隊員であったが、その、この世の地獄とも言える凄まじい状況を韓国に亡命後著したのが本書である。
平等社会を標榜する北朝鮮の似非社会主義体制は、寧ろ、労働党員をトップとする細かな階級制度によって維持されていると言ってよい。そのような階級制度は、国民の中に階級の敵と言われる階層を生み出すことによって体制の引き締めを行っている。
人民の敵とみなされるのは、その祖父母が資産家階級であった者、知識階級、あるいは日本からの帰還者と言った理由だけなのだから、ユダヤ人であるという理由だけで強制収容所に600万人もの人を送り込み虐殺したナチスと現在進行中の北朝鮮の強制収容所とは全く同じだ。
敵とみなされた政治犯たちには、凄まじい拷問の日々があるのみだ。政治犯には一片の人権すらなく、警備員、保安員による生き埋め、銃殺、輪姦は日常茶飯事であり、その食糧は警備員たちによるピンハネによって餓死線上を彷徨わざるを得ない。このような政治犯収容所で、北朝鮮帰還運動で日本から帰国した日本人妻たちが死んでいくのは著者安明進は幾人も見てきたという。（帰国運動を讃美して、多くの在日朝鮮人を北に送り込んだ朝鮮総連、そして朝日に代表される日本のマスコミの罪は重い）
内容が余りに残酷で通読には苦労する部分が多いが、隠された北朝鮮の非人道的な圧制を知る上では敢えて通読しておかなければならないだろう。
このような北朝鮮政府に援助だ支援だということを行うこと自身、ヒトラーも顔負けの悪鬼に手を貸す行為である。やはり、現政権の延命にしか役立たない「対話」政策は間違いであるという感を強くする。
（00年6月発行）