菊花の香り 金河仁 PHP研究所
「冬のソナタ」をはじめとする韓流のドラマが大流行なのだとか（とはいうものの、かの有名な「冬のソナタ」ですら一回でも見た訳ではないが）。この「菊花の香り」も韓国を国内はもちろん、アジア各国でベストセラーとなり、その「愛と死と感動のドラマ」は、映画化され近々日本でも公開されるのだとか。
おくればせながら、ちょっとミーハー気分を出して読んでみた。なるほど、「韓流」の人気の秘密とはこういうことかと、分かったような気がする。
だれもが求める「純愛の物語」がある。そして、誰もが感動する「死をも恐れない愛」という物語がある。それが、「こんなの、あり得ないよ〜」と言ったベタ甘なストーリーとしてではなく、「ひょっとしたら現代の韓国ならあり得るかもしれない」と思わせる現実感をともなっているとしたら、確かに人気は出るのではないだろうか。
ヒロインが末期のガンにおかされつつも、ガン治療を拒否して愛する夫の子供を産むという設定で、出産と彼女の死がほぼ同時に起きる場面の描写などは、現実感がたっぷりであり、並みの「純愛物」ではありませんよ、と思わせるところにも「韓流」のドラマ作りの上手さのようなものを感じる。
ストーリー性が主軸にあり、余計（？）な感情表現などには深入りしない点も、テレビとか映画のドラマ向きと言えよう。
韓流ブームに触れるという意味では手頃な一冊と言える。但し、一冊で十分、二冊目の韓流を読んでみたいという気には今のところなってはいないが。
（03年3月発行）