技術者発想を捨てろ！ 永田秀昭 ダイヤモンド
NHKのプロジェクトXなどで繰り返し唱えられる「プロジェクトの成功の秘訣」は、技術と、その技術を活かすことのできる組織マネージメントの総合力にある。
いずれか一方のみがあっても、プロジェクトは成功しない。そのような教訓からすれば、「組織運営者が技術を理解すること」と「技術者が経営思考を持つこと」のいずれもが重要だという結論は当然でてくることだが、そんな単純な結論も、現実社会では中々むずかしい。
技術が優れているのだから、売れて当然だと思う技術者、技術のことには無理解で、経営の都合や、顧客の都合を技術に押し付ける営業、といったことが、日常茶飯におこなわれてはいないか。
本書は大阪ガスの社内研究会MOT（技術経営）が、同社の「天然ガス転換」、そしてその後の「天然ガスコージェネレーションシステムの普及」を成功に導いた軌跡を記録したもので、多くの企業にとって大いに参考になるのではないだろうか。
「技術者は人に誇れるコア技術を持て」「技術のロマンにビジネスのロマンを重ね合わせろ」などの6つの法則を提示し、それらの法則の活用例などが例示されているが、これらの原則は、一見当たり前のことばかりなのだが、実際は「言うは易く、行うは難し」であることは、多くの企業では未だMOTが十分になされていないことからもうかがえる。
その意味では、大阪ガスという会社の実行力は賞賛に十分値すると思う。
（04年9月発行）