The Notebook Nicholas Sparks Warner Books
本書は、「マディソン郡の橋」を上回る全米ベストセラーとなり（邦題：きみに読む物語）映画化もされたとのことだが、確かにアメリカ人ごのみの恋愛小説に出来上がっている。
恋愛小説はある種大人のためのおとぎ話といえるのだが、アメリカ人好みの「永遠の愛」が、これでもかこれでもかと詰め込まれているところが、ベストセラーとなった最大の理由であろう。
1932年、若いノアとアリーはノースカロライナの片田舎の町で知り合い、たちまち恋に落ちて一夏を過ごす。しかし、夏の終わりにアリーは都会へと戻り二人は離れ離れになった。貧しい家庭に育ったノアとの仲を、アリーの母親は快く思わなかった。ノアがアリーに2年間送りつづけた手紙はアリーの母によって握りつぶされていたのだ。お互いを激しく思いながら、二人はやがて別々の道を歩みはじめる。そして14年後、戦争から帰り、アリーとの思い出に生きるノアの下へ、好青年の弁護士と婚約したばかりのアリーが、あるきっかけで訪れてくる。
わずか三日間のアリーの訪問で、二人の恋は再び燃え上がる。しかし、何の落度もない婚約者を裏切ることができないと、アリーはノアの下を去っていくのだがーーー。
物語の後半、老年に達したアルツハイマーにおかされた老女に、毎日、繰り返し、若き二人の恋の物語を読んで聞かせる老人がいた。「彼女は最後には、どちらの人を選んだの？」と老女はたずねるーーーーーー。
恋愛物の常道を踏んだ物語に、アルツハイマーという老人の病の切なさを加え、さらに永遠の愛、永遠の命といったメッセージが加わるのだから、やはり大人のおとぎ話としては最高の部類のできになっている。
（04年3月発行）