惜別の賦 ロバート・ゴダード 東京創元社
三十四年前、アラスカで金鉱を掘り当て大資産を築いた主人公クリスの大叔父が殺害され、クリスの幼いころからの親友ニックの父親が、その犯人として絞首刑になった。
ニックの一家は殺人者の一家として町を追われるように出て行き落魄の運命をたどることとなっる。父の無実を信じながら、親友にさえ信じてもらえずニックは淋しくクリスの下から去っていったのだ。
そして、三十四年後、クリスの姪の盛大な結婚披露宴に、浮浪者然としたニックが突然現れ、クリスに父親はやはり無実であったと訴えたが、クリスはかつての親友を、汚い物を避けるように遠ざけてしまったのだ。翌朝、自殺しているニックを発見したクリスは長年友を裏切り続けてきた自責の念にとらわれ、ニックの妹を名乗る女性と、三十四年前の殺人事件の真相を探りはじめる。
大叔父の遺産を継いで裕福な生活を送ることになった、クリスの祖母、両親の過去の行状には、次々に不審な点が浮かびあがる。ニックの父親を逮捕した刑事、裁判で証言をした男、共犯といわれながら既に刑期を終えて出所している男の足跡を追ううちに、ニックの父親の無実が、そして彼を罪に陥れた陰謀が徐々に明らかになっていく。そして、遂には、親友を裏切ったクリスを罰するかのように、クリス自身が殺人事件の犯人に仕立て上げられる罠が仕掛けられてくるーーーーーー。
謎が謎を呼び、追いかけっこのスリルありで、息もつかせず読ませる。二度、三度のどんでん返しも中々見事だ。ゴダードの作品の中でも、評価の高い本格ミステリーである。
（99年1月発行）