ヨシアキは戦争で生まれ戦争で死んだ　　　面高直子　　　講談社　　　

敗戦後の占領時代、占領軍の兵士たちによる強姦によって、占領軍兵士たちに春をひさぐ女たちによって、あるいはその他もろもろの理由によって当時「合いの子」と言う、いわれない蔑称で呼ばれた混血児が大量に生まれた。

日本の社会にも受け入れられず、かといってアメリカ人でもないという立場に置かれたこの子たちは、母親にも捨てられエリザベスサンダースホームなどに収容されていった。国際結婚華やかで、一部の混血児はハーフなどという名でむしろもてはやされるようになった現代とは異質な時代であった。

ヨシアキもそういう混血孤児の一人だった。彼は4歳の時、実母に連れられてサンダースホームに入所、11歳の時に異国アメリカにかばん一つを持って国際養子として貰われていった。

日本という国には居場所がなく、かといって占領軍の名も知らぬ兵士であった父の母国アメリカにも、かれはよそ者として受け入れてもらえないという苦痛を味わった。

しかしヨシアキは徐々にそのスポーツの才能を発揮し、地元のヒーローともなっていくのだが、アメリカに溶け込もうとヨシアキは折からのベトナム戦争へ志願兵として参戦、そして戦死した。

この実話をテレビドキュメンタリーとして製作したプロデューサーである夫が遺した資料をもとに、自身でヨシアキ、サンダースホーム、あるいはゆかりの人たちを訪ね歩いた著者が書いたこの鮮烈なドキュメンタリーは、様々な書評でもとりあげられセンセーションを呼んでいるが、なるほど評判に違わず中々重い傑作である。

タカさんは、ヨシアキとほぼ同年代である。同じ日本の同じ空気の中で生まれ育ったにもかかわらず、ベトナム戦争も知らず、社会からの疎外感、差別も意識することなく今日尚生きている自分と、ヨシアキとの違いに、何とも言えぬ思いにとらわれ、読後しばらく言葉もなかった。