愛する者に死を　　　リチャード・ニーリイ　　早川書房　　　　　　　　

このミステリーは69年に書かれたのだという。日本では余り知られていないニーリイという作家が今から40年近く前に書いた作品だが、当時のアメリカミステリー小説の雰囲気を遺憾なく発揮していて、面白いペーパーバック小説になっている。

業績不振に悩むニューヨークの出版社社長に、「9月8日にサンフランシスコで殺人を実行する。犠牲者は女性。この殺人の顛末を手記にするから出版しないか」というミステリアスな手紙が舞い込む。

社長はこの話に飛びつき、愛人とともにサンフランシスコに飛んだのだが、これは仕組まれた罠だった。

殺人現場へ誘い込まれた社長は、ニューヨークへと逃げ帰るのだが、そこにサンフランシスコ市警の警部が逮捕にやってくる―――――。

読者が手軽に読めるように工夫したのか、このミステリーの登場人物は意外と少ない。しかし、登場人物が少ない割にはどんでん返しが幾度か繰り返され、事件の要所々々には、あとで「なるほど！」と思わせる事件を説く鍵が織り込まれている。

手軽に読めるアメリカのミステリーらしい一作だ。