つばさよつばさ　　　　浅田次郎　　　　　小学館　　　　　　　　　　

JALの機内誌に掲載されたエッセー40篇を集めたのが本書である。機内誌という性格上から浅田次郎自身の旅の体験を題材にしたものが主であるが、必ずしも旅のテーマに限ってはおらず、寧ろ気ままな題材を基にした気楽なエッセー集といったところだろうか。

浅田次郎の小説は長編でも短編でもどれも勘所を押さえた「実に上手い」と思わせるものだが、このエッセーもエッセーとしての勘所を押さえ、起承転結という作法もきれいに整えたもので、やっぱり「上手い！」と思わせるものだ。

笑い、涙、薀蓄、共感等々、それぞれの一編一編には味わいがあって、しかも読み易い。しかも、駄文ではなくてなんとなく心に残るところがある。よいエッセーというほどに内容豊かとは思わないが、軽いエッセーのお手本として読む分には中々のものだとは思う。

浅田次郎はやはり相当な文才に恵まれた人なのだろう。