作家の値うち　　　　福田和也　　　　飛鳥新社　　　　　　　　　　

江藤淳などの鋭い批評家世代が去って悪口雑言はあるもののまともな感性を持つ批評家がみられなくなった文学界だが、批評、評論の類は相変わらず多く、どれもこれも生ぬるい評論ばかりだ。

そんな中で挑戦的な評論で注目を浴びつつあるのが本書の福田和也である。

本書はそんな福田の仕事を知りたくて平成12年発行とちょっと古いが本書を手にとった。

本書は福田が、エンターテイメント小説50人、純文学50人の計100人の作家の500余りの小説を一冊ずつ短評したもので、100点満点で採点しているという点もユニークだ。まさにけちょんけちょんに悪罵され、「恥知らず」とまでいわれて20点などという点数をつけられた作家の当惑し、あるいは怒った顔を想像するだけでも楽しい。

もちろん、福田和也個人の採点であって、この本を参考にして読書ガイドとすることは余りお薦めできない。

あくまでも福田という批評家の好みと、彼の悪口雑言を楽しむための本と思ってよむべきではないだろうか。

自分ならば20点以下に評価するような作家をやたらと褒め上げていたり、20点以下の作品に高得点を与えたりしているものも多く福田和也の評論もそれほどのレベルにはないという風に思ってしまう面もある。

但し、9ヶ月ほどの間に約500冊を全て完読したというから、そのバイタリティーには脱帽する。