米原万理の「愛の法則」　　　米原万理　　　　　　集英社　　　　　3/20/08

米原万理はロシア語通訳としてというよりも、エッセーイスト、講演の名手として知られている人だ。

2006年に亡くなった彼女の講演4つが収録されているが、確かに、それぞれの内容の面白さ、深さはさすがと思わせるものがある。

第一章が本書のタイトルになっている「愛の法則」の講演である。男と女の違いを、最新の生物学の知見をベースにユーモアを交えて巧みに語る。

男が多数の女性を追いかける理由、女は理想のこの世でただ一人の男性を求める理由が人間の生物としての使命が大きくかかわっていることとか、戦争がある度に、男の子の出生比率が跳ね上がる理由などが面白く語られるのだが、それを50歳を越えて独身の彼女の話として読むと益々その説明が納得できるようになってから不思議だ。

生前彼女の著作などに触れる経験はなかったが、その死後様々な方面から彼女の才能については褒めそやす論評もかなり多い。たしかに評判通り、面白くかつ才気に溢れた方であったであろうことが類推できるに十分な新書であった。