議員秘書という仮面　　　　　　上杉隆　　　　　　　小学館　　　　　

政界における不正が発生すると、必ずと言ってよいほどに議員秘書がその事件の裏でうごめいていたことが明らかになる。

田中角栄、竹下登といった首相経験者のスキャンダルでは、秘密を知っていると人物として捜査の手が及ぶ寸前に、彼らの秘書が自殺し事件は闇に葬られることになった。

近年でも土井たか子、加藤紘一、といった大物議員の秘書がらみの不祥事が話題になった。まさに議員秘書ほど権力の裏側に通じている者もいないと言ってよいのではないだろうか。

しかし、世の中には、この議員秘書と言われる存在が一体どのようなものなのかは、意外と知られていない。

本書は自身が議員秘書であった経験をもつ政治ジャーナリストの著者が、この秘密のベールに包まれた議員秘書という立場について書いた中々興味深いものである。

発行が小泉内閣発足直後の02年と、いささか古い情報に基づくところがあるけれど、秘書経験者経験談、あるいはその頃知った政界の内幕暴露物といった安易な作りではなく、筆者自身があらためてジャーナリストとして多くの秘書たちに取材し、資料に基づいて書いているだけに、その大筋においては現在も十分説得力を持つ著作と言える。

秘書の日常がどのようなものであるか、秘書同士のヒエラルキーはどうなっているかといった秘書に関する手引書でもあり、名物秘書といわれた鈴木宗男、飯島勲といった大物が、実際どのような力を持っていたのか、選挙担当秘書の日常等々、興味深いものがある。