狼王ロボ　　　　　　　シートン　　　　　　集英社文庫　　　　　　　

シートンの動物記は小学生の頃読んだ記憶がある。確か「推奨図書」の筆頭ぐらいにかかげられている名作集で、特に本書の表題にもなっている「狼王ロボ」は絵本などにもなって小学校の図書館にはかならずあるといってよいほどの「良書」だった。

今あらためて読んでみるとたしかにシートンの動物に対する愛情が溢れている名作だと思うものの、残酷と思われる場面や描写も多く本当にこの物語を昔は「良書」の筆頭に掲げていたのかとちょっと驚いた。いまの小学校の図書館には「狼王ロボ」はあるのだろうか。

並外れた知恵と力を持ちカウボーイたちを翻弄する狼王ロボ。ロボ自身彼の領域に侵入してくる人間や野放図に放牧される牛の群れに怒るかのように、次々と牛を襲い、人間の様々な罠を巧妙にかいくぐり時には毒入りのえさの上に糞をするなど人間たちをあざ笑うかのように振舞う。しかし、ついにある時、この狼王が戦いに敗れる時がくる。それはロボの最愛のメス狼ワーブに危機が訪れた時のことである----。

「狼王ロボ」の他に「灰色グマの伝記」「カンガルー・ネズミ」「サンドヒルの雄鹿」といった作品が含まれているが、その一つ一つの物語でシートンが言おうとしていることは、動物にも慈しむべき命があり、それは我々人間と全く変わらないのだというまさに動物に対する愛情であり、こういうテーマがあるからこそ一見残酷に思える描写もそれはシートンが自然に対する畏敬の念、自然にたいする感動を伝えたいがために描いたものだと思えてくる。