こんなことでよろしいか　　　 　　佐藤愛子　　 　　　集英社　　　　　　

サトーハチローの妹に当たる佐藤愛子は大正12年生まれ、今年85歳になるのだそうだ。彼女は自らの借金人生を書いた直木賞作など数多くの小説もあるが、やはり数少なくなりつつある大正女らしい歯に衣着せぬ語り口の社会批評の軽妙なコラム、随筆にこそその真価があらわれていると思う。

本書は、そういった彼女の得意分野に於いて彼女が縦横無尽に切りまくるといった趣の作品であるが、彼女が対照として切るのはだらしなくなってしまった世相や男たちよりも、むしろ彼女の同姓たちに対する叱咤激励、嘆きである。

ある意味では大正生まれのおばあさんたちが息子の嫁の世代、あるいは孫娘の世代を叱りまくり、嘆きまくるといったところが我々男性どもにとっては以外と面白いのだ。

いわば、母親が（タカさんの母親も大正生まれだった）、我々がとても恐ろしくて批判などできない妻や娘たちの世代を叱っている（あるいは愚痴っている）のを聞いているようで、時には「良くぞ言ってくれた！」と思わず喝采を叫びたくなるものも多い。

彼女自身は最初の結婚相手がモルヒネ中毒となったこともあって子供を置いて家を出たこともあり、二度目の結婚でも随分と夫には苦労させられて離婚といった中々大変な経歴をもっているだけに、その発言には迫力を感じる。

ただし、霊界だとかオカルトで最近はあのデブの霊能者とテレビ出演するなどということをしているだけに、批判された側の女性人は彼女を全く相手にしていないというところがあるのが残念だ。

多分世間一般の女性たちは、あのオカルトへの心酔ぶりからすれば、佐藤愛子というおばあさんが85になって少し頭が変になりかけていると笑っているような気がしないではない。

(08年8月発行)