聖(セイント)☆おにいさん　　　　中村光　　　　　講談社　　　　　

宗教ネタのパロディーコミックだが、コミックファンの若者たちの間では随分と人気のあるコミックだそうだ。

ブッダとイエスが天上界から地上に現れバカンスをたのしんでいるというむちゃくちゃな設定は面白い。イエスとブッダが今時の若者の姿形をして、立川のアパートで共同生活をしているという奇想天外な発想はまず成功している。

いわゆる宗教ネタのパロディーは欧米でもよくあるが、このマンガはやはり日本ならではのものといえるのは、宗教というものを捻るにしてもあまり教義がどうだとか、こうだといった宗教の本質を突くようなところはなく、イエスやブッダが起こしたといわれる奇蹟だとか、彼らが残した有名な言葉をパロディーにする程度の実に軽いノリのギャグも宗教に関しては意識が希薄な日本ならではのものといえるだろう。

しかし、パロディーの薄っぺらさには物足りなさを感じる。彼らが公園のひよこのボートに乗るといつのまにか神様パワーが利いてニワトリのボートになってしまうといった程度のギャグが面白いかどうかはちょっと理解に苦しむところはあるのだが−−−−。

設定が中々面白いだけに、もう少しギャグの質を高めればもっと面白いものになったと思うが、まあこの程度でなければ今時の若い読者層には理解できないというのが、日本の宗教状況なのかもしれないとも思った。

人気はあるというが、まあ感想としては可もなく不可もないといったところだろうか。