不思議の国のトムキンス　　　ジョージ・ガモフ　　　　　白楊社　　　　　

1950年に白洋社から発行されたジョージ･ガモフ全集（全13巻、別巻3巻）の第一巻がこの「不思議の国のトムキンス」である。

ガモフの著作の中でもつとに名の高い物で、アインシュタインもこの作品を絶賛したといわれる。

銀行員のトムキンス氏が経験する不思議な世界の探検物語の形をとり、一般相対性理論、量子論を一般向けに分かり易く解説してくれる。

光速が時速20キロという世界に飛び込んだトムキンス氏は、自転車に乗って時速20キロで走る青年がトランプの絵のように平面的な人物に見えてしまうこと、又、トムキンス氏自身が自転車で30分走ったにもかかわらず彼の時計ではまだ5分しか時間が経過していなかったといった話、あるいはトムキンス氏が粒子加速器の中を猛スピードで回らされることによって経験するなんとも不思議な世界といった物語を読むうちに、ブラックホール、反物質、クォーク等々の現代科学の最先端の概念が理解できるようになってくるという仕組みだが、この物語が今から60年も前に書かれたことにも驚く。

ある物事を真に理解しているかどうかを計る物差しは、他の人に対していかに分かり易く教えることができるかであるといわれるが、難しい物理学の理論を噛み砕いてここまで分かり易く解説できるガモフという物理学者が、いかに物理学の天才といえる人物であったのかをあらためて実感することができる。