大銀杏を結いながら　　　　　　　武田葉月　　　　　　PHP　　　　　　

あるスポーツ競技が好きになり、その競技そのものもさることながら、選手個人々々のことや、そのスポーツの裏話、選手個人の人となり等というものにも興味が湧いてきて、いわゆる「xxおたく」などといわれるほどに詳しい人というのは結構いる。

最近、土俵以外のことで何かと話題になる大相撲も、世間が注目しているのは相撲の勝負そのものよりも、寧ろ朝青龍の言動やら、八百長問題、立浪部屋の暴力問題や、大麻事件などというスキャンダラスなところに注目が集まってしまうのは、残念ではあるがまあ、正直言って相撲好きな自分にとっては、結構そういうスキャンダラスなことにも、思わず耳をそばだててしまうところはある。

大相撲に二人しかいないという特等床山の一人である著者が、50年の自らの床山人生を語り、自らが大銀杏を結った歴代の名力士や、朝青龍などの現役のこと、相撲部屋の日常や、相撲界の裏話を語るというのだから、おもわず本書を手にとったのはまあ当然の成り行きであった。

「語りおろし」といわれる書であり、内容的には期待したほどの裏話、秘話が詰め込まれているというものではなかったが、日常我々がまったく知らない床山という仕事、今は懐かしい、胸毛の朝潮や、富士櫻、高見山、子錦といった力士の話、あるいは最近なにかと話題の中心になりがちの、あのノー天気親方、大ちゃんこと高砂親方の話など、相撲好きにとっては中々面白い話が多いから、読んでがっかりということはなかった。