アキレスとカメ　　　　　吉永良正　　　　　　　講談社　　　　　　　　

ゼノンの四つのパラドックスと言えばその中でも「アキレスとカメ」がよく知られている。

「アキレスは先行するカメに追いつけない」という話、「そんなバカな」と一笑の下に却下されてしまうだろう。なぜなら、実際にはアキレスはカメに追いつくのだから。

しかし、このパラドックスを論理的に解こうとすると中々厄介だ。

なぜならこのパラドックスは巧妙に「時間」という軸を抜きにして、論理だけの問題にすり替えているからだ。

クレタ人が「クレタ人は皆嘘つきだ」と言ったとしたら、クレタ人は嘘つきなのか正直なのか、といった命題にしてもそうだが、ギリシャ時代のこういった論理学の問題は、簡単そうでいて掘り下げてみると結構奥が深い。

1を3で割れば1/3、すなわち0.333333----だ。これに3をかけると0.333333----x３=0.999999----となる。従って1=0.999999----となってしまう。(1/3ｘ3＝１なのだから）

どこかおかしいのだが、その答えをあなたは言えますか？　あるいは、０と「限りなく０に近づく」ということの違い等々、面白い数学と論理学の話から、時間軸の冠が方、数学と哲学の境界線の話など、漫画風のイラストをおりまぜて面白く説明してくれる。

但し、文章が必ずしもこなれていないので、説明不足に感じる部分もかなり多いのは難点かもしれない。