しあわせの書　　　　　　泡坂妻夫　　　　　新潮文庫　　　　　　

今年2月に亡くなった作家泡坂妻夫は、奇術、手品の名手でもあったという。この作家の作品は読んだことがなかったが、追悼記事の中で触れられていたこの作品を手にとってみた。

ヨガ行者、ヨギ・ガンジーを主人公にした探偵物シリーズの中の一冊ということだが、なるほどミステリーとしての謎解き部分には、中々こった仕掛けがあり作者が奇術師でもあったということから、なるほどと納得がいくところも多かった。

一説によれば、教祖がこれらの信者を霊界から呼び戻したのではないかという噂もある。

毎度おなじみのメンバーであるらしいヨギ・ガンジーとその仲間は、この噂の教団へと潜入、そこで教団内部では二代目教祖を誰にするかの厳しい選抜が行われようとしていた。

この教団では教祖の資格として超能力による読心術が重視されているのだが、ヨギ・ガンジーは得意の占い能力を駆使してこの読心術のトリックに迫っていく。

そこには読者も驚く、大きなトリックがかくされていた−−−−！といういささか漫画チックな筋立て、プロット、トリックなのだが、ヨギ・ガンジーという名前からしてちょっとユーモラスな主人公と、その仲間たちのこれまたマンガタッチの会話が駆使されているから、いささか荒唐無稽な部分も違和感なく読める。まあ、コミックを読んでいる感覚というべきだろうか。

ミステリーのあらすじを語る訳にはいかないのでこの辺で止めておくが、軽小説としては、まあまあといったところだろうか。

但し、追悼記事がベタ褒めするほどには興味を惹かれなかったから、余り別の作品を読んで見ようという気にはなれなかったが。