戦国女人抄 おんなのみち　　 　佐藤雅美　　　　実業之日本社　　　　

信長、秀吉、そして家康へと天下の覇権が激しく動いた戦国時代。そこには男たちの戦いと裏切りのドラマが数限りなくあるが、それと同数、いやそれ以上にこういった男たちの戦いによって運命を翻弄された女たちの物語があった。

親、あるいは夫、そして子供たちの運命とともに女たちも右往左往させられる時代。親同士、あるいは主君の命によって決められた婚姻によって女たちは嫁ぎ、夫が戦に負ければ、息子を殺され、あるいは自分自身も自害するか、夫を捨てて逃げるかの決断にもせまられる。

人質となることを潔しとはせずに自害した細川ガラシャ、そしてその息子の嫁でありガラシャから一緒に自害することを命じられたにもかかわらず実家筋へと逃亡を果たした千世。夫と再会を果たし夫も喜んでくれたものの、結局二人は過酷な運命に翻弄されることになった、といった話等、この時代の様々な女性の運命を歴史資料から描いたこの作品の書き振りは、7/8割方、小説というよりはノンフィクションを感じさせる。

男は雄々しく、女は健気で、といった理想論とは程遠く戦国時代男も女も思った以上に欲望やら怒りを露にし、且つ数々の愚行を重ねてもいる。

秀吉の秀頼溺愛や朝鮮掃討といった馬鹿げた行い、家康の天下取りのための腹黒い思惑といった有名な歴史的な出来事と並行して、こういった女たちの物語があったということにある意味この時代への親近感を持ったものだ。