煙霞　　　　　　　黒川博行　　　　　文芸春秋　

最近も映画では「オーシャンズ11」のような悪者同士の騙し合いというストーリーであるコン・ゲームは中々人気がある。

先ず事件があって、その後に仲間割れがあり悪漢同士の騙し合いで二転三転するが、更に大きなどんでん返しがあるといったパターンだけれど、銀行強盗物などもそうだが、思わず映画の観客は悪漢の側を応援したくなるような気持ちにさせるところが味噌なのだろう。

この作品もコン・ゲーム物だ。全体の会話が大阪弁ということもあるが、ストーリーはコミカルであり映画とかテレビドラマ向きでもあるように思う。

デザイン会社の経営に失敗し私立高校の美術講師となった熊谷だが、正教員にするという着任時の口約束も反故にされ、最近は府の学事課から美術教師として天下りの噂すらある中で身分は不安定な状況にある。

そんな熊谷にこの私立高校理事長酒井の不正告発文書を突きつけ退任を迫ろうという計画に加わるようにとの誘いが入る。しかも、この計画、酒井理事長を拉致して辞任の念書を書かせようというものだ。

最初は断った熊谷だが、音楽教師の菜穂子が加わることを聞いて参加することにした。

杜撰な計画は次々に予想外のハプニングがおき、結局理事長が蓄えていた金の延べ棒8本の行方を追って、教育・学校ブローカー、そしてその仲間、酒井理事長の愛人、ヤクザといった連中の騙し合いに発展、熊谷と菜穂子は事情を知らぬままにこの渦に巻き込まれたが、はからずも事件の真の黒幕に徐々に近づいていく−−−−。

金の延べ棒の行方は、そして思いがけない事件に巻き込まれた二人は――――という訳で、中々面白いミステリー作品だった。