やめたら　　　　　　　　大橋巨泉　　　　　　角川書店　　　　　

タレントとして功成り名を遂げて既に海外での優雅なセミリタイアメント生活を送る著者の生き方、あるいはもう恐い物がない立場からこそ言えると思えるような、言いたい放題に、反発を感じる人も多いだろうがある意味では羨ましく感じる人も多いのではないだろうか。

そんな著者が日本社会にとって「いらないもの」を、独特の調子で言いたい放題に列挙する本書は、その一項一項については人それぞれに賛否のあるところであろう。しかし、ここまで自分の言いたい放題を貫いた本が一冊の新書になるというのだから、やはり著者の生き方自身に好感を持つ人の数の方が相当多いということなのだろうか。

彼が「やめたら」と取り上げるのは、レジ袋、ミシェランの星、代理出産などであり、政治では世襲政治家といったところは未だおとなしい方で、民主主義も資本主義も「やめたら」となると相当過激にも思えてくるし−−−−−。その他スポーツ方面、テレビ方面などでも数々の項目を取り上げ「やめたら」と吠えまくる。

さすが、テレビ界でも数多くの人気番組をプロデュースした実績が示すとおり、大衆受けとか、売り込みの勘所を知り尽くした人の「言いたい放題」だ。

世論迎合で当たり障りのない評論ばかりするコメンテーターが多い中で、敢えて世の動きに逆らって多少毒のある発言をするところは、計算して行っているようにも思えなくもないが、それはそれで面白い。

但し「やめたら」と挙げたテーマには余り統一性がうかがえないようにも思うが、それでも「これが俺の考えだ！」と言い切ってしまうところはさすが巨泉というところだろうか。

アメリカ型合理主義や、彼自身のかつての活躍の場であった民放をくそみそにけなす割には、一方では多くの項目では「日本だけがこんなことをやっているが、欧米ではこんなバカなことはやっていない！」といった昔からのアメリカかぶれ的なところも見せるなど、随所に自己矛盾もあるが、偽善エコロジー、代理出産、世襲政治家、スポーツ解説者、バラエティー番組などを「やめたら！」という点などはタカさんも賛成だ。

タカさんもこのホームページでは常に「言いたい放題」を楽しんでいるが、著者もこの本を書いたことでさぞや気分は爽快なことだろう。

（09年2月発行）