日本人への遺言　　　　　　松原泰道　　　　　マガジンハウス　　　　

著者は明治40年生まれというから現在101歳になられる。

臨済宗妙心寺派の教学部長を務め昭和52年までは龍源寺住職、その後も各種文化団体の会長などなどを歴任された僧侶だ。

本書は著者が平成21年春に、孫たちを含む後輩世代へ伝えたい人生訓などを、遺言のつもりで纏めたものという。

ご高齢の所為もあって日々の生活も介助を一部必要とするとのことであるが、人生いまも常に好奇心をもって明るく生きているという仏教者らしい言葉に満ちている。

釈尊自身が「来世などという所に行った人がいないのだから、来世のことを考えても仕方がない。今の世をいかに生きるかが問題なのだ」と言われたように、著者の言葉も、いかに今生の人生を人間らしく生きるかということに集約されている。

「自我エゴは諸悪の根源である。自我ではなく自己を主張しなさい」などという言葉は、学校の朝礼で校長がしゃべるような言葉とも思ったけれど、確かに人生の真実をついているなぁと感心もさせられる。

数十分で十分読めるが、味わいのある一冊だ。