永遠の1/2　　　　　　　　佐藤正午　　　　　　集英社　　　　　　　

著者の競輪を題材にしたいくつかの小説は面白かったし、先日読んだ「ジャンプ」も不思議な雰囲気があって面白かったのでこの作家に興味を持ったが、代表作の一つにこれが上がっていたので手にとってみた。

84年に書かれたというから何と4半世紀も前の作品であり、小説の舞台となっているのもその当時だから何だか懐かしい感じもするものの、作品としては現代においても全く古さを感じさせない。

28歳の主人公田村は、職を失い、しばらくは失業保険で食いつなぎつつあわよくば好きな競輪で喰っていこうなどと考えている。

失業と同時に婚約者からも突然捨てられていた田村だが、歳が変わった1月からは急にツキはじめる。競輪では連勝、競輪場で知り合った女性とは上手くいってと、なんだか軽快に進むのだが、その内に自分に瓜二つの人間に間違われて殴られたり、女に泣かれたりと妙なことになってくる。

田村のこの奇妙な一年間が、ミステリアスかつユーモラスティックに描かれるが、これはまた同時に恋愛小説、SF小説的な要素も十分に取り入れられている。

全編450ページという相当のボリュームだが、結末がなんとも煮え切らないところも、この作家のトリックの一つなのだろう。

評価は分かれるようだが、自分としては高評価を与えたい。