グッドナイト＆グッドラック　　　　G･クルーニー/G・ヘスロブ　　　　　早川書房　　

反共産主義の名のもとに上院議員マッカーシーが主導した「赤狩り」は、1950年代、自由の国アメリカを蹂躙、事実無根のマッカーシーの誹謗中傷によって公職を追われるなどの被害を受けた者の数はおびただしかった。

当時のアメリカの人権、および言論の自由に対する制限は共産主義国のそれとたいしてかわらないほどに過酷なものであった。

このような暴挙に対して完全と立ち向かった人々の中には、当時黎明期にあったテレビ司会者エド・マローとそのスタッフがいた。

マローがCBSの番組キャスターとして果敢にマッカーシーの暴挙に対して挑戦しつづけたことがあのファッショ的な「赤狩り」に終止符を打ったことは、今もアメリカのテレビ界が誇りとするところである。

本書はそのマローの活躍を描いた映画脚本を小説化したもので50年代のアメリカテレビ界の活気がまざまざと感じられる。

半世紀以上前に、権力と対峙し自らが正しいと信じる報道を続けたジャーナリストがいたアメリカのメディアが、今や商業主義に流れ、又反権力の気概を失っている現状を思う時、やはりテレビというメディアは、発展の途上のどこかで大きく道を誤ってしまったことを感じる。

日本のテレビ界に至っては、センセーショナリズムと、大衆迎合の低俗化によってもはや社会に害を及ぼすような化け物になってしまっている。

古き良き時代のテレビの雰囲気をしりたければ本書をお勧めする。