悪党の金言　　　　　足立倫行　　　　　　　講談社新書　　　　　　　

著名人とのインタビュー記事を売り物にしている週刊誌、月刊誌は多いが08年に廃刊となった「月刊PLAYBOY」という男性誌も他誌のインタビュー記事とは一味違う異色の硬派なロング・インタビュー連載があった。

「月刊PLAYBOY」08年に廃刊となったが05年から廃刊までの間、この売り物のロング・インタビュー連載を執筆したのが本書の著者であり、本書はそのインタビュー連載の中から著者自身が選んだユニークな8名の人物とのインタビュー記事を再録したものだ。

取材相手はいずれも各分野で活躍する人物であり、この顔ぶれとのインタビューなら本書はハード・カバーとして世に出てもおかしくないと思えるほどに、中々お得感の強い新書版だ。

そのメンバーといえば、戦争と天皇制についての出色な記録を綴り続ける保坂正康、硬骨の評論家内田樹、「外務省のラスプーチン」佐藤優、オウム事件で一大バッシングを受けた宗教学者島田裕巳、ヤメ検として暗黒街の代理人となり石原産業事件で懲役刑が確定した田中森一、オウム真理教のドキュメント「A」で物議をかもした森達也、裏社会を内側から鋭く突いた作品で知られる溝口敦、ヒット作を飛ばし続ける重松清といった面々だ。

名前を挙げただけでも分かるように、8人いずれもがいわゆる社会に媚びない、一癖も二癖もあるといってよいメンバーだ。又、各インタビューが400字詰め原稿で30枚前後というボリュームがあるだけに、そのインタビュー内容は重厚で深く、いずれのいんたびゅーでも著者は相手の本音を引き出すことに成功している。

中でも、こういったいわゆる硬派の連中から彼等の性生活といった普段は聞き出すことができないような話まで語らせてしまうのだから、著者のインタビュー術は実に巧みというしかない。

著者はインタビュー前に膨大な事前準備を行っており、その準備によって相手の懐に飛び込み相手に同化してしまうほどの迫力と誠実さを身につけてしまったのだろうが、それにしてもこういったインタビュー術を持つ著者の並々ならぬ才能には脱帽する。