なぜ宇宙人は地球に来ない？　　　松尾貴史　　　　PHP　　　　　　　　1/03/10

心霊現象だのエセ科学だのと世の中、よくもこれだけいわゆるインチキがまかり通るのだろうかと不思議でならないが、要するにどんな怪しげな話であってもそれを信じてしまう人がいて、意図的であれそうでないにせよそれを吹聴して回る人がいるかぎりこの手のインチキ話はなくならないだろう。

そういったいわゆるインチキ話を大いに笑い飛ばそうというのが著者が本書を編んだ趣旨なのだが、攻撃される側のしぶとさは著者がいくら笑いの対象として取り上げても一向にこういうインチキ話は無くならないし、それを信じている人たちを説得することも不可能なのだから本書もあくまでも軽いコミックのつもりで読む必要があるのかもしれない。

本書では、スプーン曲げというクラシックな手品を「念力」だと偽った連中の名前を上げてその後、彼らの多くが詐欺罪などで刑事罰を受けた事実を掲げて笑ってみても、今再び彼らが何時の間にか別の番組で同じようなインチキ心霊術や念力を見せていて、そういったインチキ心霊師を大げさに取り上げて念力番組を作って「喰っている」ディレクターがいて、視聴率を稼ぎたいばかりにそういったインチキショーを放送してしまうテレビ局があるという世の中総ぐるみのインチキがまかり通っている。

又、そういう怪しげな番組を喜んで見ている視聴者がいて中には、それがショーだとおもわず信じてしまう大衆までいるのだから世の中から、いつまでたってもこの手のインチキはなくならないだろう。

超能力者ならば、折角使えるスプーンを曲げて使えなくするのではなくて、折れたスプーンをつなげて使えるようにしたらどうだ！という著者の言は確かにそうだと大いに笑える。

「予知能力」があるという霊能者を呼んで行方不明者を探すという番組が年数回放送されるが、もし本当に彼等の霊感がいうほど凄いものならば迷宮入り事件の捜査などの本当に意味のあることに使ったらよかろうにと思うのは著者だけではなく多くの人たちが思っていることだろうに。

それでも、相変わらず「マイナスイオン水」だとか「トルマリンパワー」などといわれるとこれは本物だろうと思って大枚の金を払う人たちがタカさんの回りにも随分いる。

そういう世の中が続く限り、著者のこの手の「アンチ・エセ科学」本もまだまだ売れることだろう。